Well-being有識者インタビューVol.1

「実感としての豊かさ(Well-being;ウェルビーイング)」の重要性や新指標「GDW(国内総充実)」策定の意義などを紹介するシリーズ広告。ウェルビーイングイニシアチブの円卓会議で議長を務める岡島悦子氏は「ウェルビーイングへの取り組みは企業の中長期的な価値向上につながる」と強調する。

岡島悦子 氏

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。三菱商事、ハーバード大学MBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。丸井グループはじめ複数社の社外取締役を務める。世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出。

これからの企業経営は幸福度の重視が必須になる

これまでの企業は財務情報などといった客観的数値が重視される一方、ウェルビーイングは人材戦略として捉えられてきました。しかし近年、ウェルビーイングは企業戦略の中核として据えられるようになりつつあります。

その背景にあるのは、経済の成熟や新型コロナウイルス感染症による社会的な不安だけではありません。企業経営を中長期的に観測した結果、「従業員の働きがいや満足度を重視する企業は、売り上げや利益が安定しやすい」という事実がいくつかの調査によって明らかになってきています。つまり、短期的な経営成績は優れているものの従業員の幸福度が低い企業は、持続的に稼ぐことができない可能性が高いのです。

こうした研究成果や社会情勢を受け、多くの機関投資家が企業価値の評価手法としてウェルビーイングを重視するようになってきました。最近の大きな動きとして挙げられるのは、米国の資産運用最大手がダイバーシティー(多様性)やESG(環境・社会・企業統治)を投資の基準として採用したことがあります。例えば「取締役会のマイノリティー(少数派)の構成要員の比率等の開示がない企業は投資の対象にならない」といった指針も掲げられています。

こうした企業や投資家たちの動向に伴い、人的資本の情報開示に関する基準が定められていることも見逃せないポイントです。2018年12月に、人事・組織に関する情報開示の国際標準ガイドライン「ISO 30414」が発表されていますが、今後は日本の行政や法律でも人事的な取り組み数値の公表を企業が義務付けられるようになる可能性は高いでしょう。

世界中のウェルビーイング推進の先進的企業は、従来のCSR(企業の社会的責任)ではなくCSV(共有価値の創造)を重視しています。また、多くの企業が経営指針として提示する「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の達成と財務情報的指標の結びつけを明確にする機運が高まっています。つまり利益は数値として提示されるだけでなく、「社会にどんな価値をもたらした結果なのか」という視点からも評価されるようになるということです。

欧米諸国でも日本より先行してウェルビーイング重視の動きが業界を問わず広がりつつあります。もちろん「多くの材料やエネルギーを扱うメーカーであれば、環境問題へのコミットを重視する」など、取り組むべき課題は企業ごとに異なります。そうであればこそ各社が事業内容を見直して「自分たちの会社が解決できるESGの課題にはどんなものがあるか」「それら複数の課題にどのような優先順位を付けて取り組むのか」について、真摯な議論が行われているのです。

豊さを“見える化”先進企業の知見を集結

このように今後ますますウェルビーイングを重視した経営が広まっていくことでしょう。そこで課題として浮かび上がってくるのは「働きがいや満足度といった主観的な目標の達成をステークホルダー(利害関係者)にどうやって説明するのか」。そのためにはウェルビーイングの各項目を客観的指標に置き換える方法が必要になります。

現状はウェルビーイングを数値で示す手法がまだ定まっておらず、各企業が独自基準をつくるために試行錯誤しています。国際的なガイドラインも作成されていないので、開示する情報の精度や量は各社の判断に委ねられています。これでは各社の取り組みを平等に比較することはできません。

この状況を打破するために、我々ウェルビーイングイニシアチブが提案する新指標が「GDW」です。GDP(国内総生産)に代わるものとして作成するこの指標は、非財務情報の開示方法に悩む企業にとって容易にアクセスできる「共通の物差し」になり得ます。

GDWを確かな指標にするために集結した参画企業は、利益や資源をウェルビーイング分野に積極投入しているところばかりです。個々の取り組みの中で蓄積してきた様々なデータは主観的な幸福を客観的な数値で表せるようになるための貴重な糧となります。複数企業の取り組み結果を比較することで、まずは「人的投資と持続的な稼ぐ力の相関」などを示すことができればよいと考えています。

本イニシアチブで参画企業の経営トップが集結して議論していることは非常に意義深いと考えます。なぜなら冒頭に述べた通り「ウェルビーイングは今や経営戦略の中核のテーマ」であるからです。

各参画企業は価値創造ストーリーを中長期計画の中に盛り込んでいます。さらに計画策定の過程や、結果データを開示・共有しているのも大きなポイントです。既に各社の取り組みの共通点やユニークポイントが分かってきており、知見を深め合えているのではないでしょうか。

参画企業内に共通する課題に「ウェルビーイングに関する取り組みについて従業員の理解が十分でない」点が挙げられます。幸福度を高める施策が社内に浸透したことで中長期的な稼ぐ力が向上した事例なども集められれば、こうした課題も解決できると考えています。

本イニシアチブは10年かけて活動していく予定です。じっくり時間をかけて試行錯誤しながら、本質的なルールを構築していきます。その結果、30年以降の「ポストSDGs」の世界的な目標としてGDWの向上を目指してもらえるよう、本気で取り組んでいます。

中小企業やスタートアップ企業の中には非財務情報の重要性を理解し、開示する意向があってもマネジメントコストをかけられないケースも多々見受けられます。イニシアチブで深まった知見を広く社会に共有することで、そうした企業もウェルビーイング経営を進めていけると期待しています。

その意味でトップランナーである参画企業の議論や価値創造ストーリーの策定プロセスの開示・共有は、多くの企業にとって意義のある取り組みになると確信しています。

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