Well-being有識者インタビューVol.20

SDGs(持続可能な開発目標)の目標年である2030年以降を見据えたポストSDGs議論が本格化しつつある。長年、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じ、世界各地の開発に携わってきた戸田隆夫氏は、世界中のこどもたちが未来と向き合う想像力を育むために、「Forum2050」を立ち上げた。今後の活動に向けて展望を聞いた。

写真:戸田隆夫氏

Forum2050代表、明治大学 特別招聘教授 戸田隆夫 氏

Forum2050代表、明治大学特別招聘教授。国際協力・国際開発の専門家。京都大学法学部卒業。東京大学新領域創成科学研究科にて修士(優秀論文賞受賞)、名古屋大学大学院国際開発研究科にて博士号(学術)取得。独立行政法人国際協力機構(JICA)元上級審議役。

こどもたちの想像力が未来の世界を創る
人々が「ともに幸せに生きる」世界を

問いを立て他者へ思い馳せる契機に

「Forum2050」は、世界中のこどもたちが未来の世界と向き合い、想像力を羽ばたかせることを支援する団体です。取り組みの中心となるプラットフォーム「IMAGINE2050」は、こどもたちが時空を超えて抱く未来への想いを、一人ひとりの進化も含めてアーカイブしていきます。

「未来の世界がどうあってほしいか?」、「そのために、自分は今日からどう生きるか?」という問いを立てた瞬間、人は変わります。特にこどもたちの変化には、目覚ましいものがあります。こどもたちが早い段階から広く多様な世界の未来について関心をもち、問いを立て続けることが大事です。今、深刻化する分断や格差の問題を解消し、世界中の人々がともに幸せに生きていくために、究極の解決策は、世界中のこどもたちが、自分とは異なる人々に思いを馳せ、彼らとのつながりを実感し、時空を超える想像力を育むことです。たとえば、日本のこどもたちは、恵まれているかもしれませんが、世界中の様々な国の様々な人々の状況や世界と自分とのつながりに思いを馳せることで、豊かさや平和の意味をより深く理解することになります。

人とつながりCo-Well-beingを実現

たくさんのグローバル・アジェンダが、打ち上げ花火のように、はかなく消え去っていった一方、SDGsは世界中に浸透してきています。これは、人類の快挙だと思います。しかし、あくまでも通過点です。世界中の様々な環境に生きる人々が、互いに想いを馳せ、心を通わせながら共に未来を考えるプロセスこそが平和で豊かな社会を創っていく。他者と隔絶した個々人のウェルビーイングではなく、Co-Well-being、人と人のつながりの中で「ともに幸せに生きること」を目指すことが大切です。4月に出版した拙著「脱開発と超SDGs」(創成社新書)は、これらの考えに基づいて執筆しました。

ウェルビーイングの指標化、可視化は重要です。しかし、精緻化された成果重視の国際協力で学んだ経験から、私は、指標化によって大切なものが切り捨てられるリスクも意識する必要があると考えています。未来の世界と向き合うとき、大きな志と知的な謙虚さをどこまで同時に持てるかがカギになります。他者とつながり、他者とともに生きてこそ、人は幸せを実感できる。そして、私たちはともに力を合わせることで、多くの困難を乗り越えていくことができる。そのために、世界中のこどもたちの想像力が時空を超えて羽ばたくことを私は心から願っています。

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