このように今後ますますウェルビーイングを重視した経営が広まっていくことでしょう。そこで課題として浮かび上がってくるのは「働きがいや満足度といった主観的な目標の達成をステークホルダー(利害関係者)にどうやって説明するのか」。そのためにはウェルビーイングの各項目を客観的指標に置き換える方法が必要になります。
現状はウェルビーイングを数値で示す手法がまだ定まっておらず、各企業が独自基準をつくるために試行錯誤しています。国際的なガイドラインも作成されていないので、開示する情報の精度や量は各社の判断に委ねられています。これでは各社の取り組みを平等に比較することはできません。
この状況を打破するために、我々ウェルビーイングイニシアチブが提案する新指標が「GDW」です。GDP(国内総生産)に代わるものとして作成するこの指標は、非財務情報の開示方法に悩む企業にとって容易にアクセスできる「共通の物差し」になり得ます。
GDWを確かな指標にするために集結した参画企業は、利益や資源をウェルビーイング分野に積極投入しているところばかりです。個々の取り組みの中で蓄積してきた様々なデータは主観的な幸福を客観的な数値で表せるようになるための貴重な糧となります。複数企業の取り組み結果を比較することで、まずは「人的投資と持続的な稼ぐ力の相関」などを示すことができればよいと考えています。
本イニシアチブで参画企業の経営トップが集結して議論していることは非常に意義深いと考えます。なぜなら冒頭に述べた通り「ウェルビーイングは今や経営戦略の中核のテーマ」であるからです。
各参画企業は価値創造ストーリーを中長期計画の中に盛り込んでいます。さらに計画策定の過程や、結果データを開示・共有しているのも大きなポイントです。既に各社の取り組みの共通点やユニークポイントが分かってきており、知見を深め合えているのではないでしょうか。
参画企業内に共通する課題に「ウェルビーイングに関する取り組みについて従業員の理解が十分でない」点が挙げられます。幸福度を高める施策が社内に浸透したことで中長期的な稼ぐ力が向上した事例なども集められれば、こうした課題も解決できると考えています。
本イニシアチブは10年かけて活動していく予定です。じっくり時間をかけて試行錯誤しながら、本質的なルールを構築していきます。その結果、30年以降の「ポストSDGs」の世界的な目標としてGDWの向上を目指してもらえるよう、本気で取り組んでいます。
中小企業やスタートアップ企業の中には非財務情報の重要性を理解し、開示する意向があってもマネジメントコストをかけられないケースも多々見受けられます。イニシアチブで深まった知見を広く社会に共有することで、そうした企業もウェルビーイング経営を進めていけると期待しています。
その意味でトップランナーである参画企業の議論や価値創造ストーリーの策定プロセスの開示・共有は、多くの企業にとって意義のある取り組みになると確信しています。