Well-being有識者インタビューVol.40

日本では高齢者の孤立や世代間の分断が社会問題化している。AgeWellJapanの赤木円香氏は超高齢社会の中でも、前向きに歳を重ねる人を増やしたいと考え、若者がシニアの人生に伴走するサービスを始めた。高齢者と若者の双方が主体的にウェルビーイングを追求できる社会の実現を目指す赤木氏に、起業のきっかけやAge-Wellという言葉の持つ意味を聞いた。

写真:赤木円香氏

AgeWellJapan代表取締役CEO 赤木円香 氏

慶應卒業後、味の素を経て2020年に創業。超高齢社会のAge-Wellを目指し、シニアと孫世代をつなぎ、双方のWell-beingを元に地域や企業にも貢献するサービスを展開。Forbes JAPAN「世界を救う希望NEXT100」にも選出。

若者とシニア世代つなぎウェルビーイングな社会実現へ

AgeWell Japanを起業したきっかけは骨折した祖母が漏らした一言でした。外出もできず気持ちがめいっていたからだと思いますが、「手伝ってもらってごめんね。長生きしすぎちゃったのかな」とつぶやく祖母を見て、高齢者が晩年を家族や社会に謝りながら生きる社会はおかしいと思ったのです。

医療や介護は、日常生活に支障が出た人を治療や介助しマイナスをゼロの状態に戻す仕事だと思います。Age-Wellはその後さらに、人生をプラス領域に高めることです。今までやっていたことができるようになるだけでなく、未経験のことにも挑戦できるようサポートしたいのです。例えば、定年退職後の男性が、月に数回シニアクラブに行き居場所を見つけることは、ウェルビーイングではあってもAge-Wellとは言えない。高齢者が自分の経験や知識を生かして、社会貢献したり、興味のあることに前向きに取り組んだりすることがAge-Wellです。Age-Wellはウェルビーイングよりも能動的な概念です。

AgeWell Japanでは専門スタッフ「Age-Wellデザイナー」を育成し、高齢者の自宅を訪問するサービス「もっとメイト」を提供しています。Age-Wellデザイナーは現在、1都3県を中心に合計約200人おり、8割以上が大学生です。一方的に高齢者の面倒を見るのではなく、大学生たちにも学びや気付きがある双方向の交流です。老若ともに相手を理解して年齢差別や偏見をなくすことも目的の一つです。結果としてZ世代の大学生たちもAge-Wellになれるサービスだと自負しています。デザイナーへの応募は多数ありますが、採用率は17%と狭き門です。コミュニケーション力の有無よりも、利他の精神を重視して約150時間の研修も受けてもらいます。

「もっとメイト」のほかにコミュニティスペース「モットバ!」の運営やイベントでの交流機会も設けています。イベント「Age-Wellフェスティバル」は年1回開催し、今年の来場者数は約1万6000人に達しました。

当社では社会的価値の高い「バリューポイント」と、収益をあげる「キャッシュポイント」を分けて事業展開しています。バリューポイントはBtoCの「もっとメイト」が中心ですが、自宅訪問時の会話をすべて録音して解析し、シニアの内面まで深く理解するよう努めています。このデータを匿名化して企業のシニア向け商品開発などに活用するBtoB事業が「キャッシュポイント」です。BtoB事業は地方展開もしていて、自治体や地方企業と連携してエコシステムを作っています。例えばマーケティング支援で「AとB、どちらの杖が好きか」をシニアに聞く企業は数多くあると思いますが、「周囲が杖を持つように言うのに、なぜシニアは杖を持ちたくないのか」という理由を私たちは説明できます。シニアの心情まで踏み込んだデータを持っているのが強みです。

今は少子高齢化や若者の流出が進む地方に目を向けていて、例えば浜松市のウェルビーイング課と連携してイベントを開催しました。Age-Wellデザイナーを地方で育成し地元の高齢者と触れ合ってもらい、イベントなどを通じて地元企業への就職を促せれば理想的です。地方創生の文脈でも活動していきたいと思っています。