Well-being有識者インタビューVol.31

物質的に満たされた国で経済的に安定した暮らしをしていても、日々の生活に充実感を感じられず、常に不満や不安を抱えている人がいる。一方で、物に恵まれない途上国でも毎日を楽しく過ごしている人々もいる。日本は先進国にも関わらず、幸福度ランキングでは他国と比べて低い傾向にある。昨春から1年かけ、5歳の娘とともに世界一周の旅をしたフリーアナウンサーの榎戸教子氏は、旅先で様々な「幸福の価値感」に触れてきた。旅を振り返ってウェルビーイングに生きるポイントについて話を聞いた。

写真:榎戸教子氏

アナウンサー/PICANTE代表取締役 榎戸教子 氏

1977年生まれ、静岡県出身。大学時代にスペイン留学。さくらんぼテレビ、テレビ大阪のアナウンサーを経て、フリーアナウンサーに。BSテレ東で経済ニュース番組「日経ニュースプラス9」のメインキャスタ―や政治番組「NIKKEI日曜サロン」のキャスターを歴任、現在はラジオNIKKEI第2「Business Express」に出演中。

5歳の娘と1年かけて世界一周 自ら決断し動くことが幸せの源泉

2023年3月から今年の3月まで1年かけて6大陸32カ国、100都市以上を5歳の娘と一緒に旅してきました。大学生の頃にバックパックを背負い、タイ、ベトナムを旅して以来、いつか世界一周をしたいと思っていました。その後、スペイン留学や、インド、南米へも。20代の頃に海外で受けた衝撃は20年以上たった今でも忘れられません。日本で生まれ育った私が持つ感覚や常識は必ずしも正しいわけではないこと、また物質的な豊かさが幸せに直結するわけではないと気づかされたからです。

今回の旅でも、行く先々で多くの人々に会い、それぞれの幸福のあり方を見ることができました。カトリック信者の多いポーランドに滞在した時はちょうど復活祭の時期で、親類が集いイースターエッグを作る作業も手伝わせていただき、家族の絆が幸福感の源泉なのだと実感しました。

旅に5歳の娘を連れて行った一番の理由は、私が好きなことをして楽しんでいる姿を見せたいという思いからでした。旅の途中にはハプニングもあり、結果的には楽しんでいる姿だけでなく、私が泣いたり怒ったりする姿も見せてしまいました。けれど、それも含めて娘にあるがままの姿を見せたことで親子関係に変化が生まれたように思います。娘に「ママ、大丈夫だよ」と根拠もなく言われると「なんとかなるか」と楽観的になれました。大人は、自分もかつて子供だったことを忘れて「早くしなさい」など、大人のルールを押し付けがちですが、早くする意味ってなんだろうと考えるようにもなりました。娘と関わる時間が増えたことで、以前よりも子供の気持ち、子供にとってのウェルビーイングが理解できるようになった気がしています。

「1年間仕事を中断して、旅から戻った後のことに不安はなかったの?」とも聞かれます。実は私は、今回が初めてのキャリアブレイクではありません。25歳の時に地方テレビ局でのアナウンサーの仕事を辞めて1年間、劇団に入りました。35歳の時にも母の闘病の付き添いなどでキャリアブレイクしています。今回の世界旅行は45歳での出発でした。10年ごとに仕事を中断してきたわけです。過去2度のキャリアブレイクの後でもステップアップできたという成功体験があったので、今回もそれほど不安は感じませんでした。それよりも「自ら選択したことに意味がある。未来の自分はきっとそう思うはず」という確信がありました。

そして今は次の夢が生まれています。アフリカのルワンダに住んでみたいと思っています。ルワンダに住むために英語の勉強も始めました。チャレンジすることを先延ばしにできないという危機感があります。過去の経験から、全ての条件が整うタイミングなど来ないとわかっているので、強い意思がある時に行動することを大事にしています。私にとってのウェルビーイングは、自ら決断して動くことだと思っています。